デスクトップの仮想化によるメリットとデメリット

この先、仮想デスクトップのシステムを利用するにあたって、その利点や問題点を前もって理解しておくことも大切です。デスクトップ仮想化によって得られるメリット、デメリットは利用する人の立場によっても違いがあります。まず、ユーザーにとっては利便性や生産性、ワークライフバランスの向上が期待されます。例えば、デスクトップを仮想化すると、会社の外へ出ても、同じデスクトップ環境を使用することができるので、認証の多重化やデータの暗号化、事前のバックアップ、申請手続きなどを行う必要が無くなり、それらの負担から解放されます。また、会社の中でも外でも、仮想デスクトップの環境に違いは無いので、社外だからと言って利用可能なシステムに制限が加わることもありません。そして、VDI環境では、データは各ユーザーの端末に保存されないため、端末の故障や紛失、盗難といった問題が起こっても、こうむるリスクは比較的少なくて済みます。

さらに、仮想デスクトップは、利用に際して時間や場所の制限を受けないので、在宅勤務などのテレワークにも適しています。その他に、VDI環境は、PCだけではなく、タブレットやスマートフォンなどのモバイル機器でも利用することが可能です。各ユーザーの端末にデータが残らないというバーチャルデスクトップ環境の利点を生かせば、BYODを行うために利用することもできます。「BYOD」 とは、Bring your own deviceの頭文字を取って省略した言葉で、スタッフが個人で所有しているモバイル機器を職場に持ち込んで仕事のために使用することを意味します。

VDI環境を利用する人の立場とそれぞれの利点、問題点

仮想デスクトップの環境は、ユーザーに対して、多くのメリットをもたらしますが、その反対にデメリットも存在します。VDI環境は、ネットワークを介して提供されることとなります。そのため、システムの性能はネットワーク環境に依存し、ネットワーク上に何らかの障害が発生すると、ユーザーに悪影響が及ぶこととなり、場合によっては利用できなくなることもあります。

次に、システム管理者にとって、デスクトップの仮想化により、セキュリティー面の対策を講じる負担が軽減されるというメリットがあります。システム管理者は、セキュリティーパッチやOSのバージョンアップ、データの暗号化、機器の故障、紛失、盗難への対応など、さまざまな方法で防犯管理を行う必要があります。バーチャルデスクトップ環境では、OSやデータを一元的に管理することが可能なほか、各ユーザーの端末にデータが保存されないため、機器の紛失や盗難があった場合でも防犯上のリスクが低く、システム管理者の作業に掛かる負担も軽減されることとなります。

また、仮想デスクトップの環境は、一元管理することが可能なので、システム管理者がサーバー側のソフトウェアを使用して、デスクトップ環境の追加や削除、ユーザーの割り当てなどを容易に行うことができます。そして、データが分散していないため、バックアップに掛かる作業負担も軽くて済みます。デスクトップの仮想化がなされていない環境で端末の故障や紛失、盗難などのトラブルが起こると、システム管理者は、データの復旧や機器の交換、新たな環境の設定など、さまざまな作業を行う必要があります。一方で、VDI環境では、それらの問題が発生しても、ユーザーに予備の端末に接続し直すよう依頼するだけで済みます。

システム管理者と経営者にとって仮想デスクトップ環境とは？

デスクトップの仮想化を行えば、システム管理者はそれらのメリットを得ることができますが、その反面、仮想化されていないデスクトップ環境と比較して、利用する時間や場所の自由度が高まる分だけ、管理者に掛かるサポート業務の負担が増える可能性もあります。

次に、経営者にとっては、従業員のワークスタイルを変革することが重要な条件となります。最近では、「ノマド（遊牧民）」などのように、場所を選ばないワークスタイルを導入する企業が増えて来ています。そのような状況の中で、スタッフのモチベーションやワークライフバランスを向上させるためには、仮想デスクトップ環境の利用も有効な選択肢となります。

また、ICTの導入、運用に掛かるコストやセキュリティー上のリスク、メンテナンスのための作業負担を軽減し、業務の効率化を図る上でも、VDI環境は有効に機能します。そのようにして、従業員のワークスタイルが変革すれば、社内で取り組む業務内容そのものを見直すことができる可能性もあります。

そして、バーチャルデスクトップ環境があれば、災害が発生し、スタッフが出社できない状況の中でも、業務の継続が可能となります。過去の災害発生時にも、テレワークなどのワークスタイルを導入した企業は、比較的早く業務を復旧させることができたようです。