VSANのメリットとデメリット

VSANとは、VMware Virtual SANの略号を示すものでSoftware-Defined Storageを実現するVMwareの最初の製品となったものです。VSANの内容は、ハイパーバイザー統合型ストレージといわれるもので、ハイパーバイザーであるvSphere(ESXi)に、ストレージの機能を埋め込んだ商品考えれば理解しやすくなります。ハイパーバイザーをインストールしたx86サーバに内蔵されているHDDやフラッシュを抽象化することにより、単一のリソースプールにすることで、高いパフォーマンスと耐障害性に優れた共有データストアを作成するのがこの商品の狙いとなっています。

共有ストレージを不要にするのが大きなメリット

VMware Virtual SAN は次のような特徴をもちます。

  • ローカルサーバに搭載されたディスクを利用した共有ストレージ
    (大容量安価な磁気ディスクと、高速低遅延なフラッシュデバイスを組み合わせたハイブリッド型 の実現)
  • ストレージポリシーによる管理
    (可用性やパフォーマンスを仮想ディスクの粒度で定義)
  • 柔軟な拡張性
    (ホスト追加による動的なストレージ拡張により3から32ノードまでサポート)

一般的に、仮想化基盤を構築しようとする際には大きなコスト負担となる共有ストレージを導入することが必須とされてしまうものですが、VSANを導入すれば、こうした共有ストレージを導入する必要がなくなります。VSANは、その代わりに各ホストサーバに内蔵されているSSDやHDDなどのローカルなディスクを仮想的に束ね、単一の統合データストアとして運用することができるようになります。したがって単純にホストサーバを追加するだけで、簡単に共有ストレージの容量とI/O性能を拡張することができるのが大きなメリットとなります。業界標準の低コストなサーバーコンポーネントに展開できることから、共有ストレージに掛かるコストが不要であることで注目が集まっています。独立した専用ハードウエアを必要とせず、仮想マシンのポリシーによってストレージサービスレベルの監視をしているという点も魅力的なポイントといえます。
また仮想サーバのデータは、ポリシーに従い複数台のホストサーバのローカルディスクに冗長化されて保存されることになります。万一、いずれかのホストサーバに障害が発生した場合でも、データは保護されるため運用に支障は生じません。

SSDとHDDの特性に合わせた運用設定が可能

VSANは、ホストサーバに内蔵されている高速なSSDを効果的に活用することで、仮想的な統合データストアのI/O性能をさらに高めることが可能です。すべての書き込みデータをいったんSSDに蓄えた後、余力時間を使ってHDDに移します。また、読み出しデータについてもSSDをキャッシュとして利用することができるのです。仮想化基盤を一元管理するVMware vCenterを利用すれば、各ホストサーバに内蔵されている任意のSSDおよびHDDに対して利用割り当ての設定を行い、ポリシーに基づいた統合データストアの運用を実現します。
初期設定では、SSDの30%をデータ書き込み用のバッファに利用し、70%をデータ読み出し用のキャッシュとして使用することができるようになっていますので、必要に応じてこの割合を変更することも可能です。

応用事例も多数登場

このVSANを活用することで、共有ストレージを用いた場合と同等もしくはそれ以上に、利便性の高い仮想化基盤を構築・運用することが可能です。具体的な応用事例としては、仮想デスクトップを構築することが出来るのです。社内に分散しているクライアントPCを仮想化し、ホストサーバー側で集中管理を行うことにより運用コストの低減やセキュリティ強化の実現、また、開発環境を提供することも可能です。システム構築プロジェクトの作業負荷の変動にあわせ、必要な数の仮想サーバを動的に立ち上げたり、リソースを拡張したりすることができますので、シンプルでスケールアウトを簡単に実現でき、しかもTCOの削減に寄与することができるようになるのです。さらにBCP対策で待機系システムのための仮想化基盤をシンプルで低コストに実現することができ、リカバリ先を安価に構築することも出来ます。

実際に利用してみると

高性能な共有ストレージは、パフォーマンス的にVSANを上回るでしょう。共有ストレージの場合は、拡張した場合にある程度パフォーマンスを予想できますが、VSANのホストサーバーを増やした時に、どれだけリニアに性能が向上するかは十分に検証したほうが良さそうです。また、最近はオールフラッシュの共有ストレージであってもSSDの容量単価が下がってきたため、それと比較した場合にVSANのコストメリットが無くなりつつあります。また、VSANを利用したHCIパッケージの場合、ライセンスコストがかなりかさむことが多く、それほど安価に導入できるわけではないことも分かってきています。

さらに、ある程度大規模な仮想環境をVSANで構築しようとすると、ホストサーバーの台数がかなり膨大になってしまうことがわかっています。ハードウェアの台数が増えれば障害ポイントが増えることになり、管理面で煩雑になってしまいます。また、データセンターでのラックスペースや電力コストが高くなってしまうことも懸念されます。

VSANをいきなり大規模な仮想環境に導入するには入念な事前検証を行うべきだと考えますが、新たに仮想環境をスモールスタートするのであれば、1つの選択肢となることは間違いありません。