シンクライアントシステムの概要と特徴をご紹介

IT関連用語の1つ「ゼロクライアント」の概要と特徴

皆さんの中には、IT関連の用語として「ゼロクライアント」という言葉を見たり聞いたりしたことのある方もいらっしゃるのではないでしょうか。ゼロクライアントと呼ばれる端末は、OSを一切搭載せずネットワーク接続と画面描画・ディスプレイ出力、キーボード・マウス入力の機能のみを備えている端末です。こちらの端末では、仮想デスクトップを利用することにより、OSやアプリケーション実行環境がほぼ全てのサーバー上に存在しています。サーバー接続による仮想デスクトップ利用に特化することで、導入や運用に掛かるコストを削減し、高度なセキュリティー・メンテナンス性を備えているのは、ゼロクライアントのメリットと言えます。

ゼロクライアントは、OSをインストールする必要性が全くなく、ネットワークを経由してサーバー上にあるバーチャルデスクトップ環境を利用する端末です。また、こちらの端末には、ハードディスクなどのローカルストレージが搭載されていません。そしてゼロクライアントは、従来のパソコンと比べると導入や運用に関するコストが低く抑えられ、高度なセキュリティーの維持、メンテナンス性の向上がなされています。

ゼロクライアントについて理解するためには、シンクライアントとの相違点を把握することも大切です。両者とも、「筐体がコンパクトで、サーバー接続によるバーチャルデスクトップ環境の利用で動作するエンドポイントの端末である」という共通した特徴がありますが、その性能には大きな違いが存在します。

シンクライアントとの相違点と仮想デスクトップ環境

ゼロクライアントとシンクライアントには、機器構成やプロトコル、各種設定、アプリケーションの面で相違点があります。その内、機器構成に関して言えば、ゼロクライアントの場合、バーチャルデスクトップ環境端末専用のプロセッサが搭載されています。そのため、シンクライアントとは違って、インストール済みのOSやCPU、ハードディスクを必要とせず、高速の起動が可能であるほか、ウイルスなどに対するセキュリティー面の施策を講じる作業も簡単なものとなります。

また、ダウンタイムが最小限に抑えられるため、ユーザーの生産性を向上させることが可能です。そして、専用のハードウエアを使用するため、メンテナンスの必要性もほとんどありません。その一方で、シンクライアントには機能の制限されたデスクトップ版、組込み版のOSがインストールされています。こちらの端末には、一般的なパソコンと同様に、CPUやハードディスクが搭載されています。

先ほども述べたように、ゼロクライアントやシンクライアントでは、仮想デスクトップ環境を利用することとなります。仮想デスクトップ環境では1台のホストサーバーの未使用領域を利用し、複数のユーザーに自分専用の端末と同様の感覚で、利用することのできるバーチャルデスクトップ環境を同時に提供します。仮想デスクトップは、VDIとも呼ばれますが、こちらは「Virtual Desktop Infrastructure」の頭文字を取って省略されて知られる名称です。VDIは、コンピューターのデスクトップ環境を拡張するために使用するソフトウェアの1つです。

バーチャルデスクトップ環境と歩んできた歴史

仮想デスクトップ環境は、ゼロクライアントやシンクライアントで利用されます。そのような場面では、物理的な単一のディスプレイに対して独立した複数のVDI環境、もしくはディスプレイの表示領域よりも広範囲のデスクトップ空間が提供されます。バーチャルデスクトップ環境では、データセンターやサーバールームにある仮想サーバー環境でOSやアプリケーションの実行が行なわれ、各ユーザーの端末には、画面情報を転送するだけになります。

そうしたデスクトップ仮想化の技術は、2008年ごろから開発がスタートしました。仮想デスクトップが登場する前から、シンクライアントやリモートデスクトップなど、似通ったシステムは存在したものの、通信速度の遅いことが課題となっていました。昨今では、それぞれのメーカーで技術革新が進められ、次世代通信の登場したことによって、仮想デスクトップ環境の端末でも、ローカルPCと同様の間隔で操作することができるようになりました。最近では、一見しただけではローカルPCとシンクライアントの区別がつかないほど、デスクトップ仮想化の技術は進んできています。

仮想デスクトップと物理デスクトップにはそれぞれのメリットがあるので、一概にどちらが良いと結論づけることはできません。例えば、物理デスクトップの環境は一人ひとりのユーザーにとって「取り扱いに慣れている」「データが手元の端末に保存されている」「データを参照するだけなら、ネットワークに接続しなくても良い」などの利点があります。