「仮想デスクトップ」に最適なフラッシュストレージ
第10回では、サーバーの仮想化が進むことにより、従来のLUNやボリュームベースのストレージ管理では困難になっていることや、変化が多く巨大化するシステムを受け止めるストレージとしての「インフラのコード化(Infrastructure as a Code)」の必要性、スケールアウトする規模への対応、そして未来予測まで、管理する立場から見たストレージのあるべき姿を解説しました。今回は、フラッシュストレージの主な用途のひとつ「仮想デスクトップ」について解説します。
仮想デスクトップの有用性と利点
仮想デスクトップは、企業の従業員などが使用するクライアントPCの仮想化を実現するソリューションとして、導入が進んでいます。仮想デスクトップの特長のひとつは、クライアントPCの管理を集中的に行えることです。かつてIT管理者は、社内に散らばるクライアントPCのOSアップデート、Officeなどのソフトウェア更新、セキュリティパッチの適用・設定の変更、ウイルス対策ソフトのアップデート、盗難や紛失の対応などに大きな労力を使っていました。そこで仮想デスクトップの登場により、クライアント環境のテンプレートを作成して複製することで、こうした管理工数を大幅に削減できるようになったのです。
また、ネットワークさえつながれば、あらゆる場所や端末から同じ環境を利用できるため、働き方改革、在宅ワークのシステムのひとつとして注目されています。加えて、クライアントPCのHDDやUSBメモリなどにデータを保存することなく利用できるので、情報漏えいのリスクを下げるという利点もあります。
仮想デスクトップのシステムは、サーバー仮想化と同様のインフラ(サーバー、ネットワーク、ストレージ)またはHCI(ハイパーコンバージドインフラストラクチャ)で構築され、データセンターに置かれます。クラウド事業者による「DaaS(Desktop as a Service)」の提供形態もあります。
IT管理者は数百、数千、数万に及ぶ仮想デスクトップを一元管理することが可能となり、そこでフラッシュストレージが担う役割としては、快適に仮想デスクトップ環境を利用できることと、重複排除と圧縮によりストレージ容量を削減することです。
仮想デクストップを高速かつ安定運用するには
仮想デスクトップの活用において、ストレージ管理者として留意しなければいけないポイントがあります。まずは仮想デスクトップが安定して高速な性能を発揮できること、仮想デスクトップ単位でストレージ情報を可視化できること、そして仮想デスクトップの展開と再構成が高速に処理できることです。
安定して高速なストレージ性能を発揮できる要件について、以前の仮想デスクトップは、始業時のブートストーム、ログインストームによる過負荷がハードディスクでのストレージの課題として挙げられてきました。特に大規模な仮想デスクトップ環境では、多くのユーザーが同時にアクセスを行うことでIOのピークが発生し、ハードディスクでのストレージ性能では捌ききれなくなることがあります。この、仮想デスクトップの挙動が遅くなるという問題は、現在ではハイブリッドストレージやオールフラッシュストレージのサイジングを的確に行うことで総じて解決される場合がほとんどです。
ただし、各仮想デスクトップが安定して稼働するためには単にフラッシュストレージにすれば済む訳ではなく、仮想マシン(仮想デスクトップ)単位にストレージ性能を最適化することが求められます。Tintri VMstoreの例では、自動で性能を最適化する機能および手動のQoS機能で各仮想マシンに上限と下限のIOPSを設定できる機能を有します。これにより、特定のユーサーが高負荷なIOベンチマークをかけ続けたり、ウイルススキャンを行うことで他の仮想マシンの性能に悪影響を及ぼすノイジーネイバー問題やモンスターVM問題にも対処したりすることができます。
仮想デクストップの展開時間を短縮するストレージ技術
次に、仮想デスクトップの実装方式として、OSイメージをどのように展開するのかがポイントとなります。VMware Horizon Viewを例にとると、デスクトップOSの仮想マシンを、それぞれ1台の仮想マシンとしてOSイメージを格納するのが「フルクローン」方式です。通常フルクローンでは、初期展開時にテンプレートとなる仮想マシンから仮想化ハイパーバイザーのクローン処理により数百台、数千台といった必要数の仮想マシンを複製します。展開した後は、それぞれのユーザーが決められた仮想マシンにアクセスし、仮想マシン内のデータやプロファイル情報は保持され続けます。展開時にストレージ側が支援機能(VAAI: vStorage APIs for Array Integration)を実装しているかどうかによって、展開にかかる時間や容量の削減効果に差が出ます。
もう一方の展開方式が「リンククローン」方式です。リンククローンでは、マスターとなる仮想マシンイメージがまず有り、数百台、数千台と言う各仮想デスクトップは差分のファイル(仮想ディスク)によって管理されます。セキュリティ要件、アプリケーションの更新のためにマスター仮想マシンを更新したものを再構成処理(リコンポーズ)によって比較的簡単に各デスクトップに反映させることが可能です。保持されるべきデータは、ユーザプロファイルをファイルサーバーに格納したり、通常ディスク(パーシステントディスク)を作成したりします。
その際にチェックすべきポイントは、再構成処理にかかる時間と再構成処理がされていない通常稼働の仮想デスクトップに与える影響です。
リンククローン方式では、OSのセキュリティパッチ、Officeソフトウェアの更新、アプリケーションの更新を反映させるために、まず、マスターの仮想マシンに更新を適用し、その後、数百台や数千台などリンククローン方式の各仮想マシンを再構築します。従来、この再構成処理はシステム全体およびストレージには大きなシーケンシャルIOの負荷が掛かり、時間がかかるため、週に一度、月に一度などのタイミングで、金曜の業務時間後から開始し、翌週月曜日の業務開始までに終了する必要があり、便利なはずのリンククローンの再構成が管理者にとって課題となることがありました。
VMware Horizon Viewのリンククローン方式に限られますが、再構成処理にかかる時間は、VCAI(View Composer API for Array Integration )に対応しているがどうかが大きなポイントとなります。前述の通り、リンククローン方式では各仮想デスクトップの差分と仮想ディスク(ファイル)が作成されます。VCAIはファイルシステムを持った一部のNASの VAAI(NFS-VAAI)のみが対応できるAPIで、各仮想デスクトップの差分ファイルの作成処理をストレージ側に委任することができます。委任されたNASは、内部でファイルのメタデータをコピーするだけで非常に高速にリンククローンを再構成することが可能です。これは、ファイルシステムを持たないLUNベースのフラッシュストレージでは実現できない機能です。
Tintri VMstoreで1000台のリンククローンの展開および再構成にかかる時間を例にとると、一般的なオールフラッシュのSANストレージは2時間以上の時間を必要とするのに対し、TintriはVCAIで再構成することで、1時間程度で処理を終えることができます。加えてVCAIによって展開された仮想デスクトップは、IO負荷がより低くより快適に稼働することも特徴です。
Tintri VMstoreは自動QoSによる性能最適化機能を併せ持ち、ノイジーネイバー問題となり得る再構成処理の際にも、再構成されていない他の仮想デスクトップが安定して稼働することができ、複数のデスクトッププールや運用ポリシーが混在する大規模な仮想デスクトップ環境や、DaaS基盤に利用することが可能です。
仮想デスクトップの実例
ここでひとつ、実際に仮想デスクトップをサービスとして提供している実例を紹介します。
NTTネオメイトでは、AQstage(アクステージ)仮想デスクトップサービスを展開しており、様々な企業の仮想デスクトップ環境をサービス運用しています。このサービス基盤のストレージはTintri VMstoreによって構築されており、QoS機能によって安定したサービスを提供しています。また、仮想マシンのごとの状況把握と追跡を可能としており、運用負荷を軽減しています。NTTネオメイトのDaaSでのユニークな特長として、仮想マシン単位に保証したいIOPS値を設定し、仮想デスクトップごとにディスクI/O性能を予約できる付加価値サービスメニューも提供しています。
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今回は、仮想デスクトップにおけるストレージの重要性について解説しました。次回は、これまでの内容を振り返りながら、ストレージにおけるチェックポイントを確認します。
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